物流業界の人件費
物流業界では、人手不足や人件費の高騰が深刻な課題となっています。特に倉庫や配送の現場では、ピッキングや仕分けなど人力に依存する作業が多く、自動化の遅れが人件費の負担をさらに大きくしています。
この記事では、物流における人件費の現状と、コスト削減につながる取り組みについて紹介します。
物流業界では、人件費が大きな負担に
物流業界では、輸送に関わる費用や倉庫の運営費など、さまざまなコストが発生します。なかでも特に負担が大きいのが人件費です。人件費はコスト全体の中でも大きな割合を占めており、経営を圧迫する要因の一つになっています。
たとえば、トラック運送事業では、営業費用全体のうち約4割が人件費という調査結果もあります。倉庫業でも、仕分け・荷積み・検品といった多くの業務が人の手に頼っており、人件費がコスト全体の中でも大きな比重を占めています。
※参照元:経済産業省・国土交通省・農林水産省「我が国の物流を取り巻く現状と取組状況」
(https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/sustainable_logistics/pdf/001_02_00.pdf)
人件費が増加している背景
物流業界で人件費が増加している背景には、大きく3つの要因があります。
1つめは、慢性的な人手不足です。日本全体で少子高齢化が進み、若い世代の労働力が減っているなか、物流業界は「体力的にきつそう」「給料が安そう」といったイメージから、他業種に比べて応募が集まりにくい傾向にあります。その結果、人材確保のために賃金を引き上げざるを得ず、人件費が上昇しています。
2つめは、働き方改革の影響です。労働時間の上限が設けられたことで、1人あたりがこなせる業務量が減少。その分、同じ業務を回すために人員を増やす必要があり、人件費がかさみます。
3つめは、EC市場の拡大です。ネット通販の普及により、荷物の取扱量は年々増加しています。とくにBtoCの配送では、個人宅への小口配送が中心となるため、荷物の数が多く、届け先もバラバラです。そのうえ「早く届けてほしい」というニーズが強く、現場では多くの手間と人手がかかります。
これら3つの要因が重なり、人件費の増加を引き起こしています。
人件費を削減にするには
では、人件費を減らすにはどうすればよいのでしょうか。単純に人を減らすだけでは、問題の解決にはなりません。物流現場では一定の品質や正確性が求められるため、安易なコストカットはトラブルや事故を招くリスクがあります。
まずは現場の作業を見直し、どこに無駄があるのか、どこに人手がかかりすぎているのかを洗い出すことが大切です。そのうえで、効率化や自動化といった対策を講じていく必要があります。
物流ロボットを活用する
近年、物流現場で少しずつ導入が進んでいるのが「物流ロボット」です。ピッキングや仕分け、搬送といった単純で繰り返しの多い作業は、ロボットによる自動化と相性がよく、現場の人手不足を補う手段として注目されています。
たとえば「自動搬送ロボット(AMR)」を導入すれば、作業員が倉庫内を歩き回って荷物を運ぶ必要がなくなります。重いものを持つ負担も減り、体への負担軽減や労働環境の改善にもつなるでしょう。
また、ロボットはミスなく一定のスピードで作業をこなせるため、ヒューマンエラーの削減にも効果的です。交代や休憩も不要なので、安定稼働によって生産性アップも期待できます。
導入には初期コストがかかりますが、長い目で見れば「人手が足りない」という根本的な課題の解決につながる可能性があります。
とくにパレタイジング(荷積み作業)は、物流現場でもっとも体力を使う作業のひとつです。重い荷物を何度も積み上げることで、腰や膝への負担が大きく、ケガや疲労のリスクも高まります。
こうした作業を代わりにこなしてくれるのが「パレタイザー」です。正確な動きで荷物を積み上げてくれるため、作業者の負担を軽減しつつ、ミスや荷崩れといった事故の防止にも役立ちます。
作業フローやマニュアルを見直す
現場の作業フローやマニュアルを見直すことも、人件費を抑えるための有効な手段です。たとえば、倉庫内の動線が複雑だったり、作業手順が人によってバラバラだったりすると、小さなムダが積み重なり、人手が多く必要になります。
作業ルールを整えて標準化すれば、誰でも同じ手順で効率よく作業することが可能に。また、商品の並べ方を少し工夫するだけでも移動距離が減り、1人あたりの作業量がアップすることもあります。
物流管理システムを導入する
在庫や出荷、配送の管理を紙やExcelで行っていると、どうしても手間がかかり、人の手を多く必要とします。
物流管理システム(WMS)を導入すれば、在庫状況・入出庫・ロケーションなどの情報を一元管理することが可能。リアルタイムで確認できるため、誤出荷や在庫ミス、二重入力などのトラブルも防止できます。
こうした業務が自動化されれば、「人が手でやらなくていい作業」が増え、結果として人件費の削減にもつながります。
物流拠点を見直す
拠点が分散しすぎていると、それぞれに人員を配置する必要があり、人手が余分にかかってしまいます。複数の物流拠点を統廃合し、全国に点在する拠点を再配置することで、人員や設備の削減につながります。
さらに、人件費だけでなく、光熱費や事務処理といったコストも削減可能。また、拠点をひとつに集約すれば、ロボット導入などの設備投資にも踏み切りやすくなるでしょう。
ただし、配送距離の増加や災害時のリスク分散といったデメリットもあるため、自社の物流網にあわせた慎重な検討が必要です。
人員の定着率を高める
人件費というと「人を減らす」方向ばかりが注目されがちですが、「辞めない人を育てる」ことも重要なコスト対策です。
離職率が高いと、新人の採用や教育にかかる時間やコストが繰り返し発生し、結果として大きな負担になってしまいます。逆に、長く働いてくれる人が増えれば、経験値が高まり、教育コストも抑えられ、現場の作業効率や対応力も向上します。
人員の定着率を高めるには、働きやすい職場環境の整備が欠かせません。たとえば、シフト体制の見直しやわかりやすいマニュアルの作成、負担の大きい作業の自動化なども効果的です。こうした取り組みが、「ここで働き続けたい」と思える職場づくりにつながっていきます。
物流業務のアウトソーシングを活用する
自社で行っていた作業を、外部の業者に任せる「アウトソーシング」も、人件費対策のひとつです。たとえば、梱包・検品・ラベル貼りなどの作業を外部に委託すれば、社内スタッフの手を他の作業に回すことができます。
とくに業務量に波がある現場では、アウトソーシングが効果的です。「必要なときに、必要な分だけ依頼する」というスタイルをとれば、人件費を変動費として管理できるようになり、無駄がありません。
ただし、品質の低下や納品ミスといったトラブルが起きる可能性もあります。事前に外注先と業務内容をすり合わせ、進捗管理をしっかり行うことが大切です。
生産性を向上させたい場所から選ぶ!
おすすめパレタイザー3選
生産現場や物流センターで自動化が進む中、ロボットパレタイザーの導入は効率化の鍵となります。しかし、導入において、どの工程でどの程度の生産性向上が期待できるかを具体的に確認することが重要です。そこで、生産性向上の観点でおすすめのロボットパレタイザーを3つご紹介します。
機器1つで最大5人分の労働力(※)
荷積みの生産性を安定させる
パレタイジングロボット
PA-20/PA-40/PA-50
(メーカー:YUSHIN(旧:ユーシン精機))

(https://www.yushin.com/ja/products/detail/pa.html)
特徴
- 最大1時間500個の運搬力。四方向すべてにパレット搬送路が設置が可能で、生産効率の良い配置を実現。
- 誰にでも操作しやすい機能性の高いコントローラ。位置補正機能もあり、ワンタッチでパターン変更も可能
少種・大量生産のライン
コンベア全体の生産性向上
フジエース
袋用
(メーカー:不二技研工業)

(https://fujigiken.racms.jp/paretaiza/)
特徴
- 米国ベーカリー規格に準じ、大手製粉メーカーの基準を満たす袋用の機械式パレタイザー。
- 国内外で1600台の納入実績があり、400台が稼働中。(2021年9月公式HP確認時点)
過酷な環境でも耐えうる
防塵・防滴の安定した稼働
MOTOMAN-HC30PL
6軸垂直多関節
(メーカー:安川電機)

(https://www.e-mechatronics.com/product/robot/palletizing/lineup/hc30pl/spec.html)
特徴
- 防じん・防滴仕様で、塵や埃、液体への対環境性を考慮した半導体や医薬品の製造現場におすすめ。
- 6軸垂直多関節ロボットで作業範囲が広いため、どんな高さのパレットにも対応できるのが特徴。