荷待ち時間の問題と改善策
ドライバーの労働環境に悪影響を及ぼすとして問題視されているのが、「荷待ち時間」です。働き方改革に関する法改正が進められる中で、この荷待ち時間の削減も重要な課題のひとつになっています。
この記事では、荷待ち時間が発生する原因や、物流業界への影響、そして改善に向けた対策について、分かりやすく解説します。
「荷待ち時間」とは
荷待ち時間とは、荷物の積み込みや荷降ろしに伴って、ドライバーが現場で待機する時間のことです。多くの場合は荷主や物流施設側の事情によって発生し、ドライバー自身ではコントロールできません。
この荷待ち時間は、トラック輸送の効率や収益に大きく影響するだけでなく、労働時間としてもカウントされるため、ドライバーの労働環境にとって深刻な問題となっています。
荷待ち時間はどれくらい発生している?
国土交通省が2021年に行った「トラック輸送状況の実態調査」によると、1運行あたりの荷待ち時間は平均1時間34分にのぼることが分かっています。
また、荷待ちが30分を超えるケースは全体の約8割を占めており、そのうち1時間を超えるケースが50.1%、2時間を超えるケースが17.7%という結果も出ています。運送業者にとっては見過ごせない状況ですが、荷主企業の多くがこうした実態を十分に把握できていないことも、課題のひとつとされています。
※参照元:国土交通省「トラック輸送状況の実態調査結果(概要版)」[PDF]
(https://www.mlit.go.jp/jidosha/content/001409523.pdf)
荷待ち時間による影響と問題点
ドライバーの労働環境が悪化する
荷待ち時間が発生すると、ドライバーはその場に拘束され、労働力がムダになってしまいます。さらに、真夏の炎天下や真冬の寒さの中で待機を強いられることで、身体的・精神的なストレスも大きくなります。
こうした負担が積み重なると、ドライバーの早期離職や業界からの離脱を招きやすくなり、慢性的な人手不足がさらに深刻化するかもしれません。
コストが増える
運送業界では、限られた時間の中でいかに効率よく配送を行えるかが、収益を左右します。荷待ち時間が長くなるとトラックの稼働率が下がり、1日にこなせる配送件数が減ってしまうため、売上の機会損失につながります。
さらに、人手やトラックを追加で確保しようとすると、燃料費・保険料・整備費用・採用コストなどが重なり、経営への負担も大きくなります。
信頼関係や企業イメージへの悪影響
荷待ちによる遅れが配送スケジュールに影響すると、納品の遅延やミスが発生し、取引先とのトラブルを引き起こす可能性があります。
それが続くと、信頼の低下によって契約を打ち切られるリスクも。また、対応の悪さが表面化すれば、企業のブランドイメージが傷つき、競争力の低下につながることもあります。
荷待ち時間が発生する主な原因
物流拠点の出荷体制が整っていない
荷待ち時間の大きな要因のひとつが、出荷体制の不備です。たとえば、製造が遅れていてトラック到着時にまだ荷物が用意できていない場合、積み込みまでに長時間の待機が発生してしまいます。
また、製造遅延や在庫不足といったトラブルが起きた際に、関係部署間での情報共有が不十分だと、現場では状況が把握できず、結果としてドライバーが無駄に待たされる事態につながります。
物流拠点のキャパシティ不足
トラックが荷物を積み降ろしするためのスペースである「トラックバース」が足りない場合、出荷準備が整っていても、順番待ちによる荷待ち時間が避けられません。特に配送車が集中する時間帯は、待機が長引きやすくなります。
さらに、入出荷作業や検品・仕分けなどを行う人手が足りない場合も、作業の流れが滞り、荷待ち時間を引き延ばす要因となります。
荷主の理解・協力不足
荷待ち時間による悪影響は運送業界にとって深刻ですが、荷主側の理解や協力が十分に得られていないという現実もあります。背景には、荷待ちがもたらすコスト増や非効率の負担が主に運送業者側に集中しており、荷主側には直接的なペナルティがないという構造的な問題があります。
そのため、実態への理解が浅く、改善に消極的な荷主が少なくないことも、荷待ち時間の削減が進みにくい理由のひとつ。運送業者と荷主の間にある認識のギャップを埋めていくことが、今後の大きな課題となっています。
荷待ち時間を減らすための改善策
予約管理システムを導入する
トラックの積み降ろしの順番待ちが原因で荷待ちが発生している場合は、バース予約システム(予約管理システム)の導入が効果的です。あらかじめ積み降ろしの時間帯を予約しておくことで、ドライバーが現場で待機する必要がなくなり、スムーズな荷役作業が可能になります。
また、予約管理システムを導入することで、ドライバーの待機時間削減だけでなく、物流施設側の作業効率化や時間短縮にもつながります。運送業者と荷主、双方にとってメリットのある取り組みといえるでしょう。
パレットを活用する
荷待ち時間の要因として意外と見落とされがちなのが、バラ積み商品の存在です。商品を1つずつ手作業で積み降ろすのは非常に時間がかかり、作業効率も悪くなります。
そこで有効なのがパレットの活用です。パレットにまとめて荷物を積むことで、フォークリフトによる一括搬出入が可能となり、荷役作業の大幅な効率化が実現します。
さらに、作業負担の軽減や荷物の破損リスク低下といった副次的なメリットもあり、現場全体の負担を和らげる効果も期待できます。
荷主企業が現状を正しく把握する
荷待ち時間の問題を根本から解消するには、荷主側の意識改革と現状把握が欠かせません。まずは、発荷主・着荷主の双方が荷役や荷待ちにかかる時間を把握し、データに基づいた改善の取り組みを進めることが重要です。
また、荷主と運送業者の間で積極的に情報共有を行うこともポイントです。入出荷の予定や作業状況を事前に共有することで、無駄な待機を減らし、効率的な運行スケジュールの構築が可能になります。
荷待ち時間を大幅に短縮!
荷待ち時間が発生する原因のなかでも特に多いのが、出荷体制が整っていないことです。その背景には、出荷準備に時間がかかっているという課題があります。
こうした課題の解決に役立つのが、パレタイザーの導入です。パレタイザーを使えば、商品の積み付け作業を自動化できるため、人手で対応するよりもスピーディかつ正確に処理できます。
その結果、出荷準備がスムーズに進み、トラック到着と同時に荷物の積み込みが可能に。ドライバーの待機時間をグッと減らすことができるため、荷待ち時間の大幅な削減が期待できます。
また、荷待ち時間の短縮に加えて、省人化や作業者の負担軽減といったメリットも得られ、生産性向上にもつながるでしょう。
生産性を向上させたい場所から選ぶ!
おすすめパレタイザー3選
生産現場や物流センターで自動化が進む中、ロボットパレタイザーの導入は効率化の鍵となります。しかし、導入において、どの工程でどの程度の生産性向上が期待できるかを具体的に確認することが重要です。そこで、生産性向上の観点でおすすめのロボットパレタイザーを3つご紹介します。
機器1つで最大5人分の労働力(※)
荷積みの生産性を安定させる
パレタイジングロボット
PA-20/PA-40/PA-50
(メーカー:YUSHIN(旧:ユーシン精機))
(https://www.yushin.com/ja/products/detail/pa.html)
特徴
- 最大1時間500個の運搬力。四方向すべてにパレット搬送路が設置が可能で、生産効率の良い配置を実現。
- 誰にでも操作しやすい機能性の高いコントローラ。位置補正機能もあり、ワンタッチでパターン変更も可能
少種・大量生産のライン
コンベア全体の生産性向上
フジエース
袋用
(メーカー:不二技研工業)
(https://fujigiken.racms.jp/paretaiza/)
特徴
- 米国ベーカリー規格に準じ、大手製粉メーカーの基準を満たす袋用の機械式パレタイザー。
- 国内外で1600台の納入実績があり、400台が稼働中。(2021年9月公式HP確認時点)
過酷な環境でも耐えうる
防塵・防滴の安定した稼働
MOTOMAN-HC30PL
6軸垂直多関節
(メーカー:安川電機)
(https://www.e-mechatronics.com/product/robot/palletizing/lineup/hc30pl/spec.html)
特徴
- 防じん・防滴仕様で、塵や埃、液体への対環境性を考慮した半導体や医薬品の製造現場におすすめ。
- 6軸垂直多関節ロボットで作業範囲が広いため、どんな高さのパレットにも対応できるのが特徴。