物流業界の省人化
自宅にいながら買い物ができるECサイトの需要の拡大を受け、物流業界の取り扱う荷物が増え続けています。一方で、労働人口の減少によって人手の確保が難しくなっていることから、省人化の推進は物流業界が至急取り組むべき課題と言えるでしょう。ここでは、省人化を実現することで得られるメリットや導入を検討したいソリューションについて解説します。
物流業界の課題と省人化が求められる背景
物流業界の課題として省人化が求められる背景としては、新型コロナウイルスの影響によるECサイトの需要の拡大があげられます。
在宅時間が増えたことによってオンラインでの購買活動がこれまでにないほど盛んとなり、小口配送の物量や頻度が増加。労働時間や業務負荷の増加に加え、他業種に比べて賃金水準が低い傾向もあり、物流業界の人手不足はさらに深刻化しています。
国土交通省が発表した「最近の物流政策について」によると、トラック運送事業の労働時間は全職業平均より約2割(年間400~450時間)長く、年間賃金は全産業平均より5~15%(20~60万円)低いことが明らかになっています。また、有効求人倍率が全職業平均より約2倍高いことからも、人手不足の問題はかなり深刻と言えるでしょう。
人手不足を解消するための取り組みとして、物流業務の負担を軽減する省人化が求められています。
※参照元:一般社団法人日本物流団体連合会「最近の物流政策について」(PDF)(https://www.butsuryu.or.jp/20240926-02.pdf)
省人化によって得られるメリット
人手不足の解消
人手の確保が難しくなっている物流業界において、省人化を進める大きなメリットは人手不足の解消につながることです。これまで人間が担っていたピッキングや運搬などの作業をロボットに任せることで、人手で行う作業範囲の削減が可能に。少子高齢化によって労働人口の減少が進んでいるからこそ、限られた人員でも事業を継続・成長させられる省人化の必要性が高まっています。
生産性の向上
機械を用いることで重量物をスムーズに取り扱えるようになり、さらに24時間稼働し続けられるため、生産性の大幅な向上を実現できます。また、繁忙期・閑散期の生産状況に応じて稼働率を調整することで、余剰な労働力を抱える必要がなくなり、人件費を削減できるのも省人化によって得られるメリットです。
作業品質の安定化
人手による作業だと、作業者によってスキルや経験値にバラつきがあり、業務効率や生産性に影響が出ることがあります。ロボットを導入して省人化を進めていけば、作業者のスキルや経験値に依存しない安定した作業品質の維持が可能に。また、人間だと欠勤や退職などがどうしても発生してしまいますが、ロボットなら休まずに稼働し続けられるため、長期に渡って安定した生産を確保できるといったメリットもあります。
事故・ケガの防止
作業のなかには、重い荷物の運送や高いところにある商品のピッキングなど危険を伴うものもあります。危険を伴う作業をロボットに任せることで、事故やケガのリスクを軽減でき、作業者の安全性の向上と作業環境の改善を図ることが可能。ロボットによっては周辺情報を検知して自律走行するものもあるため、そういったロボットを導入することでフォークリフトとの接触事故や荷崩れによる巻き込み事故なども軽減できます。
物流の省人化を叶えるロボット
物流業界の省人化を実現するうえで、導入を検討したいロボットについて紹介します。
パレタイザー
パレタイザーはパレットへの積み付け作業を自動化するロボットで、物流倉庫や製造工場などで広く活用されています。
重量物を取り扱う積み付け作業は肉体的な負担が大きく、作業者の経験やスキルによって仕上がりが左右される作業です。パレタイザーを導入すれば重量物の積み付け作業も正確かつスピーディーに行え、作業者の負担軽減と生産性の向上の両方を実現することが可能。手作業での積み付けに比べて荷崩れのリスクも低減できるため、商品の破損やクレームの防止にもつながるメリットがあります。
AGV(無人搬送車)
AGVは、搬送作業を自動化するロボットです。床面に貼られた磁気テープなどのガイドを読み込みながら自動で走行するナビゲーションシステムが採用されており、ルートの変わらない工場や倉庫などでの繰り返し作業に適しています。初期設定やメンテナンスが比較的しやすく、コストが低いのもAGVのメリットです。
もともとは製造業の現場などで使用されていたロボットですが、オートメーション化やAI技術の進展などによって物流業界でも活用されています。
AMR(自律走行搬送ロボット)
AMRは、搭載されたカメラやセンサーで周囲の棚や障害物の位置などを検知し、目的の場所まで自律的に移動する搬送ロボットです。AGVと違って、床面に磁気テープなどのガイドを設置する必要がないため、レイアウトの変更や台数の追加などによってルートが頻繁に変わる工場や倉庫などに適しています。
AGVよりも柔軟性と適応性に優れている一方で、本体コストが高いというデメリットがあります。また、比較的軽量の物しか運搬できない点にも注意が必要です。搬送ロボットであるAGVとAMRのどちらを採用するかは、導入する施設の環境や予算などに応じて選ぶ必要があります。
ピッキングロボット
ピッキングロボットは、出荷指示書や伝票に従って必要なものを自動で取り出す機械です。
これまで実現は難しいとされてきたピッキング作業の自動化ですが、技術の進歩によって形状や大きさなどが異なるものでもロボットによるピッキングが可能に。ピッキングロボットの導入によって作業者の労力や手間を削減できるのはもちろん、ピッキングミスなどのヒューマンエラーの発生を抑えられ、業務の平準化や作業スピードの大幅アップを叶えられるといったメリットもあります。
ピッキングロボットと搬送系のロボットを組み合わせれば、ピッキング作業の全自動化も実現できます。
自動倉庫
品物の入庫や保管、出庫までをコンピュータで一元管理し、業務プロセスを自動化した倉庫のことです。さまざまなシステムで構成されており、システムの組み合わせによって自動化の範囲を拡大することが可能。省人化の促進を図れるほか、作業効率を大幅に向上できるのが自動倉庫のメリットです。
自動倉庫には、一棟まるごと建設する建築一体型のものもあれば、既存の倉庫内に自動倉庫の機能を持つ設備を導入するタイプもあり、用途に適した種類を選ぶ必要があります。ただ、どのタイプを選ぶにしても大規模な設備投資となり、一定の取り扱い量を超えないと損益分岐点には到達しません。省人化に大きく貢献する設備ですが、スペースや予算の限られる小規模の会社では導入が難しいといったデメリットがあります。
まとめ
物流業界で深刻な問題となっている人手不足を解消するには、省人化がカギとなります。省人化を実現するためにも、パレタイザーをはじめとした業務を自動化するロボットの導入を検討しましょう。
ロボットを導入することで人手不足の解消に取り組めるほか、長時間労働や業務負荷の軽減といった労働環境の改善、業務効率の向上、事故やヒューマンエラーの防止といったメリットを期待できます。省人化を効果的に進めるには、ロボットをただ導入するのではなく、自社の条件や目的などに合ったロボットを選ぶことが重要です。
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おすすめパレタイザー3選
生産現場や物流センターで自動化が進む中、ロボットパレタイザーの導入は効率化の鍵となります。しかし、導入において、どの工程でどの程度の生産性向上が期待できるかを具体的に確認することが重要です。そこで、生産性向上の観点でおすすめのロボットパレタイザーを3つご紹介します。
機器1つで最大5人分の労働力(※)
荷積みの生産性を安定させる
パレタイジングロボット
PA-20/PA-40/PA-50
(メーカー:YUSHIN(旧:ユーシン精機))

(https://www.yushin.com/ja/products/detail/pa.html)
特徴
- 最大1時間500個の運搬力。四方向すべてにパレット搬送路が設置が可能で、生産効率の良い配置を実現。
- 誰にでも操作しやすい機能性の高いコントローラ。位置補正機能もあり、ワンタッチでパターン変更も可能
少種・大量生産のライン
コンベア全体の生産性向上
フジエース
袋用
(メーカー:不二技研工業)

(https://fujigiken.racms.jp/paretaiza/)
特徴
- 米国ベーカリー規格に準じ、大手製粉メーカーの基準を満たす袋用の機械式パレタイザー。
- 国内外で1600台の納入実績があり、400台が稼働中。(2021年9月公式HP確認時点)
過酷な環境でも耐えうる
防塵・防滴の安定した稼働
MOTOMAN-HC30PL
6軸垂直多関節
(メーカー:安川電機)

(https://www.e-mechatronics.com/product/robot/palletizing/lineup/hc30pl/spec.html)
特徴
- 防じん・防滴仕様で、塵や埃、液体への対環境性を考慮した半導体や医薬品の製造現場におすすめ。
- 6軸垂直多関節ロボットで作業範囲が広いため、どんな高さのパレットにも対応できるのが特徴。