パレット標準化とは
物流の現場では、荷物の運搬や倉庫での保管を効率化するために、パレットが欠かせません。パレットを適切に活用することで、効率的な輸送が可能となるだけでなく、作業負担の軽減にもつながります。しかし、現状では異なる規格やサイズのパレットが混在しているため、その効果を十分に発揮できているとは言えません。
こうした課題を解決するため、政府はパレットの規格を統一する「パレット標準化」の取り組みを進めています。ここでは、パレット標準化が求められる背景や期待される効果について詳しく解説します。
パレット標準化とは?
物流業界では、人手不足やドライバーの長時間労働が深刻な課題となっています。国土交通省の調査によると、トラックドライバーの荷役時間は1運行あたり約1時間30分にも及び、特にバラ積み・バラ卸しが労働負担の大きな要因になっていることが明らかになっています。
また、国内ではさまざまなサイズのパレットが使用されており、それぞれの事業者や業界ごとに異なる規格が存在しています。輸送時と保管時で異なる規格のパレットが使われているため、入荷・出荷のたびにパレットからパレットへ積み替えるという非効率な作業が発生しており、物流の効率化を妨げる要因となっています。
こうした課題を解決するため、国が中心となって進めているのが「パレット標準化」です。パレット標準化とは、物流現場で使用されるパレットの規格や運用方法を統一し、効率的な輸送・荷役を実現する取り組みのこと。標準仕様としては、1,100mm×1,100mmサイズのパレット(T11型)が採用され、材質や強度などの仕様も統一される方向です。
パレット標準化によって期待される効果
パレットの標準化が進むことで、物流業界にはさまざまなメリットがもたらされます。中でも特に期待されるのは、積み替え作業の削減、トラック輸送の効率向上、倉庫の保管スペースの最適化、物流コストの削減、そして環境負荷の軽減です。
積み替え作業の削減
これまでの物流現場では、荷主や取引先ごとに異なる規格のパレットが使われていたため、出荷や受け取りのたびに異なるパレットへの積み替えが発生していました。パレットの規格が統一されることで、発荷主から着荷主まで同じパレットを使用できるようになり、これまで頻繁に発生していた積み替え作業が不要になります。
荷役作業の負担が軽減されるだけでなく、作業時間の短縮にもつながり、倉庫や物流センターでの業務がよりスムーズに進むようになるでしょう。人手不足が深刻化する中で、より少ない人員で業務を回せる点は大きなメリットです。また、積み替え時に発生しやすい荷崩れや破損のリスクが減ることで、輸送中の商品品質を維持しやすくなり、物流の安定性も向上します。
トラックの積載率の改善
パレットのサイズが統一されていない場合、トラックの荷台スペースを十分に活用できず、輸送効率が低下していました。しかし、規格が統一されることで、パレットのサイズや形状に合わせて積載レイアウトを調整する手間がなくなり、荷台スペースを効率的に活用できるようになります。
その結果、トラックの積載率が向上し、同じ量の荷物を運ぶために必要な台数を減らすことが可能に。輸送回数が減ることで、燃料費の削減やドライバーの労働時間の短縮につながり、全体の輸送コストを抑える効果も期待できるでしょう。
倉庫の保管効率の向上
これまで異なるサイズのパレットが混在していたため、倉庫内のレイアウトやラックの設計が統一できず、デッドスペースが生じる原因となっていました。しかし、規格が統一されることで、ラックや保管エリアの設計を最適化でき、限られたスペースを無駄なく活用できるようになります。
また、フォークリフトによる荷役作業もスムーズになり、入出庫の時間を短縮することが可能。さらに、標準化されたパレットを使用することで、倉庫の自動化やロボット導入のハードルが下がり、物流DXの推進にもつながるでしょう。
物流コストの削減
パレット標準化は、物流コストの削減にも大きく寄与します。異なる規格のパレットが混在していると、積み替え作業にかかる人件費が増えたり、輸送時の積載率低下によって輸送コストが増加したりと、余分なコストが発生します。また、自社でパレットを所有している企業では、パレットの回収や管理にかかる負担も少なくありませんでした。
パレット標準化が進めば、こうした無駄なコストを削減し、より効率的な物流運営が可能になります。さらに、レンタルパレットシステムを導入すれば、パレットの回収や管理にかかる手間を軽減できるだけでなく、大量のパレットを保管するためのスペースを確保する必要もなくなります。
環境負荷の軽減(脱炭素への貢献)
環境負荷の軽減という観点からも、パレット標準化は大きな役割を果たします。輸送効率が向上することでトラックの走行回数が減り、CO2排出量を削減できます。さらに、異なる事業者間での共同輸配送が容易になり、物流ネットワークの最適化も進むでしょう。
また、パレットの再利用が促進されることで、木製パレットの新規生産を抑えられるため、森林資源の保護にもつながります。
パレット標準化が進んでも残る課題とは?
パレット標準化によって、物流の効率は確実に向上するでしょう。しかし、パレットを活用するためには、「荷物をパレットに積み付ける作業」が必要です。この「パレタイズ作業」は、いまだに多くの現場で人力に依存しています。
重量物や大量の荷物を一つひとつ積む作業は、時間がかかるだけでなく、作業員にとって身体的負担が大きいもの。人手不足が深刻化している物流業界では、長時間の肉体労働が離職率の上昇を招きやすく、作業員の確保をさらに難しくする要因となっています。
パレット標準化が進んでも、積み付け作業が人手に頼ったままでは、現場の負担は変わりません。そこで注目されるのが、パレタイザーの導入です。パレタイザーとは、荷物を自動でパレットに積み付ける機械のことで、物流倉庫や製造工場で広く活用されています。パレタイズ作業を自動化することで、作業者の負担を大幅に軽減可能。手作業に比べて短時間で確実に積み付けられるため、全体の作業効率も向上します。
また、パレタイザーの導入は、作業の省力化だけでなく、輸送品質の向上にもつながります。人手による作業では、作業者の経験やスキルによって積み付けの仕上がりにばらつきが生じることがあります。しかし、パレタイザーを活用すれば、常に一定の精度で荷物を配置でき、荷崩れのリスクを低減することが可能。輸送時の安定性が向上し、商品破損の防止やクレームの削減にもつながります。
パレット標準化が進む今こそ、パレタイザーを導入する絶好のタイミングです。スムーズな物流を実現するために、パレタイザーの導入を検討してみてはいかがでしょうか。
生産性を向上させたい場所から選ぶ!
おすすめパレタイザー3選
生産現場や物流センターで自動化が進む中、ロボットパレタイザーの導入は効率化の鍵となります。しかし、導入において、どの工程でどの程度の生産性向上が期待できるかを具体的に確認することが重要です。そこで、生産性向上の観点でおすすめのロボットパレタイザーを3つご紹介します。
機器1つで最大5人分の労働力(※)
荷積みの生産性を安定させる
パレタイジングロボット
PA-20/PA-40/PA-50
(メーカー:YUSHIN(旧:ユーシン精機))

(https://www.ype.co.jp/product/detail/pa.html)
特徴
- 最大1時間500個の運搬力。四方向すべてにパレット搬送路が設置が可能で、生産効率の良い配置を実現。
- 誰にでも操作しやすい機能性の高いコントローラ。位置補正機能もあり、ワンタッチでパターン変更も可能
少種・大量生産のライン
コンベア全体の生産性向上
フジエース
袋用
(メーカー:不二技研工業)

(https://fujigiken.racms.jp/paretaiza/)
特徴
- 米国ベーカリー規格に準じ、大手製粉メーカーの基準を満たす袋用の機械式パレタイザー。
- 国内外で1600台の納入実績があり、400台が稼働中。(2021年9月公式HP確認時点)
過酷な環境でも耐えうる
防塵・防滴の安定した稼働
MOTOMAN-HC30PL
6軸垂直多関節
(メーカー:安川電機)

(https://www.e-mechatronics.com/product/robot/palletizing/lineup/hc30pl/spec.html)
特徴
- 防じん・防滴仕様で、塵や埃、液体への対環境性を考慮した半導体や医薬品の製造現場におすすめ。
- 6軸垂直多関節ロボットで作業範囲が広いため、どんな高さのパレットにも対応できるのが特徴。